FAQ

子宮頸がん検診(細胞診)異常の精密検査について

Q 子宮がん検診で異常を指摘されました。今後、どのように対応していけばよいのでしょうか?
A
以前はパパニコロー分類というⅠ~Ⅴ段階で評価する方法でしたが、現在は世界的に使用されている、細胞を見た診断医の印象を表示するベセズタシステムが日本産科婦人科学会により採用されています。これにより、子宮がんに変化していく軽度、中等度、高度異形成、上皮内がん、子宮頸がんという病変をそれぞれに表記していきます。
LSILは軽度異形成、HSILはその後に中等度異形成から上皮内がんまでのコメントがつき、がんはSCCまたはAdenocarcinoma(腺がん)となり、精密検査として組織診(生検)が必要となります。これとは別に、AGC(異型腺細胞)、ASC(異型扁平上皮細胞)という、上記のどれとはいえませんが、細胞に異型所見があるという判定があります。
ASCはその後に異型の弱いL、異型の強いH、またはそのどちらかが判定できないUSというコメントがつきます。子宮頸がんの60~70%は扁平上皮がん(膣側の細胞)なので、腺細胞(子宮内膜側)の異型と扁平上皮細胞の強い異型は、やはり精密検査が必要です。
組織診となりますが、異型の弱いASC-LとASC-USは3カ月後の細胞診再検か、子宮頚がんの原因となっているHPV(ヒト乳頭ウイルス)を持っているかを調べて、陽性ならば組織診へ、陰性ならば1年後の細胞診再検となります。

HPVワクチンについて

Q HPVワクチンにはどういう種類のワクチンがあり、どのくらいまで有用性がありますか?
また、何歳まで打つメリットがありますか?
A
子宮頸がんの原因が、性交渉で伝播されるHPV(ヒトパピローマウイルス)であるということがわかり、関与している15種類の中の16型、18型がその原因の60~80%を占めているということでワクチンが開発され、2009年より接種が開始されました。
最初は16、18型を予防する2価のワクチン(サーバリクス)と、コンジローマというイボをつくる6、11型も予防できる4価のワクチン(ガーダシル)がありましたが、2021年2月より登録施設のみで31、33、45、52、58型を加えた9価のワクチン(シルガード9)が接種可能となりました。
20~30年以上有効性は保つと予想されています。自費接種の制限はありませんが、費用効果的には45歳くらいまでといわれています。
3回目の接種のブースター効果で抗体価が急激に上昇するため、2回接種ではあまり効果を期待できず、3回接種が必要です。3回の接種費用は2価、4価のワクチンで約5~6万円、9価のワクチンで8~10万円位かかります。
なお、感染する前に接種すべきということで、小学6年生から高校1年生までの女児に対し、公費で無料接種できますが、現在は2価、4価ワクチンのみが対象です。なおワクチンを打ったからといって今感染しているウイルスを排除できるわけではなく、ほかの型のウイルスの感染によってがんになる可能性もありますので、通常通りの子宮がん検診は必要です。
Q 娘に子宮頸がんのワクチンを打たせようと思いますが、安全でしょうか?
A
2011年からは中学1年生~高校1年生まで、2013年からは小学6年生から高校1年生までの女子に無料接種が開始されました。その後、複合性疼痛症候群と呼ばれる慢性疼痛・痙攣・めまい・意識障害・疲労感等の副反応が報道され、67.2%あった接種率は1%にまで激減しました。
2013年6月に、厚生労働省は積極的接種勧奨を差し控え現在に至っていますが、この副反応はほかのワクチンでも同様の頻度で起こり、海外と比べて発生頻度に差がないことから、WHOは2015年に日本だけ若い女性が本来なら避けられるはずの子宮頸がんの被害と脅威に暴露され続けていると名指しで批判しました。
日本産科婦人科学会もワクチン接種を推奨しており、子宮頸がん予防のために、接種をおすすめいたします。

月経前緊張症(PMS,PMDD)について

Q 生理予定1週間前くらいよりイライラ、下腹部痛等が起こりますが、何か病気があるのでしょうか?
A
月経開始1~14日前より症状が発現し、月経開始後2日以内にその症状が速やかに消失するものを、月経前症候群(緊張症)PMS、なかでも精神症状が強いものをPMDDといいます。原因は、排卵後に卵巣に形成される黄体という組織から分泌される黄体ホルモンの増減に、自律神経がうまく対応できていないことといわれていますが、性格・ストレス・基礎疾患等も関与しているようです。
治療は(1)症状に応じて対症療法(鎮痛薬、安定剤、睡眠薬等)、(2)自律神経失調症の治療(漢方薬、自律神経作動薬等)、(3)ピル(排卵を起こさせず黄体をつくらせない)があります。

帯下増量について

Q 最近おりものが増えてにおいがあります。
A
女性ホルモンが頸管腺より透明な分泌物を出していること、膣の細胞も毎日入れ替わっているので剥がれた細胞が混じることから、透明から薄い白色の帯下は正常です。また、排卵の頃はホルモンが多量に分泌されるため、排卵時の透明な帯下の増量も正常です。
色の付いた(濃い白や黄色)帯下、臭いのある帯下の場合は、膣炎(細菌、真菌、アメーバ等)の増殖、頸管炎(子宮の中)の感染症(性病)に分けられます。
においに関しては、酸臭は正常です。生臭いにおいの場合は常在菌ですが、嫌気性菌の増殖が多いようです。

避妊法について

Q 各種避妊法とその失敗率、メリット・デメリットを教えてください。
A
現在日本で可能な避妊法は、主に確率のよいほうより(1)ピル(経口避妊薬)、(2)IUD(子宮内装具、通称リング)、(3)コンドーム、(4)殺精子剤があります。
膣外射精や月経周期を利用するオギノ式避妊法、手術による卵管・精管結紮は割愛します。

01ピル(経口避妊薬)

排卵抑制・子宮内膜形成抑制・頚管粘液分泌抑制作用により、99.7%以上と高い避妊率です。ほかにも、「月経量が減少する」「月経痛が軽減する」「月経前症候群の症状がなくなる」「にきびがよくなる」「内膜症がよくなる」などの副効用もあります。
反面、副作用として吐き気・頭痛・浮腫・食欲亢進・乳緊等がありますが、ほとんどの方は2~3周期で軽減するようです。また、毎日内服しなければならないので、生活が不規則な方やルーズできちんと内服できない方には向かないこと、稀ですが血栓症を起こす可能性があるので、タバコを吸う方、血圧が高い方などに使えない場合があります。

02IUD

IUDには、(a)着床を抑制する単なる異物としてのIUD、(b)精子の侵入を防ぐ銅が付加されたIUD、(c)黄体ホルモンを徐放性に放出し子宮内膜をつくらせないことによってさらに着床を阻害するIUD(IUS)があり、それぞれ1年間の避妊失敗率は1~2%、0.7%以下、0.3%以下となっています。
IUDは、挿入してしまえば1年に1回の位置確認の受診をするだけで済む楽な避妊法です。ただし、(a)(b)は月経量・痛が増加したり、月経が長引いたりという副作用が出ることがあります。
(c)はピル同様、月経症状が軽くなり、原則血中濃度は上がらないのでピル内服時の副作用はありません。また、卵胞ホルモンが入っていないので血栓症のリスクもありません。ただし、排卵抑制効果は原則ないので、月経前症候群の症状は緩和されません。
(b)(c)は銅のコーティングの保障、ホルモン剤放出期限の問題があり、5年で交換が必要です。

03コンドーム

避妊失敗率は1年間の理想的な使用で約3%、一般的な使用で約15%と、平均約10%の失敗率といわれています。避妊効果的には満足とはいえませんが、簡単に使用でき、性交感染症の防止という大きなメリットがあります。
デメリットとしては、やや性交感が落ちる、ゴム・ラテックスアレルギーの方には使えない、ということがあります。

04殺精子剤

性交前に膣内にゼリーやフィルムを挿入するものですが、避妊失敗率が15%以上のため緊急時以外では単独の使用はおすすめできません。

緊急避妊について

Q コンドームが性交時に破れてしまいました。緊急避妊について教えてください。
A
緊急避妊法には、失敗後72時間以内に内服するピルと、IUDを挿入する方法があります。ピルは排卵前であれば、排卵を起こす黄体形成ホルモンの分泌を遅らせることにより排卵のタイミングをずらし、大量の黄体ホルモン剤を子宮内膜に作用させることで着床を妨ぎ、避妊効果を得ます。しかし、排卵そのものは起きるので、避妊できる確率は失敗後内服24時間以内なら約95%、72時間以内なら約85%です。
IUDは前述したとおり、着床障害を起こします。したがって、今後も長い避妊を希望される方に向いています。

妊娠と薬について

Q 妊娠初期に市販の風邪薬を飲んでしまい、胎児の奇形が心配です。
A
妊娠週数は月経から排卵までが2週間の前提で数えますので、実際の妊娠成立(受精)日を妊娠2週として計算していきます。そこから2週間は受精卵細胞が分裂(卵割)して胚葉を形成する時期なので、そこで大きな影響があれば細胞分裂が止まり流産となるか、100%修復をされ正常に戻るかなので、奇形は起きません。
尿妊娠反応が陽性になる妊娠4週(月経予定日)から16週までが器官形成期で、この時期の薬・レントゲン等が胎児に奇形を起こす可能性がありますが、妊娠12週以降は小児に使わない薬や妊娠後期の鎮痛剤、その他一部の薬を除いては投薬可能になります。
では、12週までに薬を飲んだ場合ですが、一般的に出生する赤ちゃんの100~200人に1人は大きなものから小さなものまで含めて奇形を持って生まれます。一般的な薬で催奇形性が0.5%を超えるような薬はほとんどないので、影響はまず考える必要はありません。
だからといって、内服してよいわけではないので、やむを得ない場合以外は避けましょう。また、お酒・タバコは器官形成期以降も胎児・母体に悪影響がありますので、妊娠中は控えましょう。

月経周期異常について

Q 生理(月経)不順ですが治療が必要ですか?妊娠しにくいですか?
A
まず排卵が時々でもあっての生理不順なのか、全く無排卵での生理不順なのかが問題となります。排卵があれば医学的には周期的に生理がなければならないとか、その周期が1ヶ月以内でなければならない、などという根拠はありません。殆どは中枢性(脳から分泌されるホルモンの分泌不良)のもので、何歳になって周期が整わなければ治療しなければならないという決まりもありませんが、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)という卵巣そのものに原因があって進行性に排卵しにくくなる病態の場合、排卵があってもホルモン治療が必要なこともあります。基礎体温を3周期くらい付けて一度も高温層が見られないようなら婦人科の受診をおすすめします。排卵がない状態であれば基本的には妊娠しませんが、周期が不順であると排卵のタイミングがわかりにくかったり、月経周期が長ければ排卵回数が少ないことになりますので確率が悪くなるということで、定期的な一ヶ月周期の人に比べると妊娠率が落ちる可能性はあります。

不正性器出血について

Q 明らかな生理ではない出血がありました。すぐ病院に行かなければいけませんか?
A
不正性器出血には1)婦人科的な器質疾患(組織や細胞の異常、外傷)からおこるもの、2)産科的原因によるもの、3)内分泌的異常(ホルモン分泌異常)によるものとに分けられます。1)については、悪性のものであれば子宮癌、残りは良性ですが子宮膣部びらん(粘膜のただれ)ポリープ(粘膜のいぼ)、閉経後の萎縮性膣炎、時に子宮筋腫(粘膜下、筋腫分娩)等が原因になることがあります。2)は初期という限定ですが切迫流産、子宮外妊娠の場合もあります。3)は卵胞発育不全によるものと、排卵後にできる黄体(妊娠のために必要な組織)の機能不全によるものがあります。子宮癌検診を1回/年で受けているのであればそう心配しなくてもよいのですが、続くようなら病院を受診しましょう。

月経困難症について

Q 生理痛がひどいのですが鎮痛剤で様子をみていてもよいですか。
A
生理痛(月経困難症)には機能的疾患(一時的な不調)と、器質的疾患(組織や細胞の異常)によるものとに分けられます。前者は俗に言う生理痛で、鎮痛剤で痛みが治まるならば特に心配ないので様子をみていてもよいのですが、年々痛みが増してくる場合や性交痛があらわれてきた場合、黄色い帯下(おりもの)が出てきた場合は、子宮内膜症(子宮腺筋症含む)、子宮筋腫、子宮頚管炎(クラミジア、淋病等)の病気がある可能性がありますので産婦人科を受診されてください。なお日本では、鎮痛剤を飲まずに生理痛を我慢するよう保健体育の授業で指導されているようですが、鎮痛剤は胃を荒らすだけで特に副作用はありませんので、アレルギーのある方以外は積極的に内服されて全く構いません。

不妊症について

Q 結婚の予定があるのですが、子供ができるか心配です。不妊症かどうかの検査に行きたいのですが。
A
不妊症の定義は(世界的には)、カップル(結婚していなくても可)が1年以上避妊せず妊娠が成立しない場合をいいます。昔は女性因子が多くを占めていましたが、最近ではストレスや環境ホルモン等の影響で、精子に問題がある男性側の原因による不妊が増えており、一般的には不妊の原因の40~45%が男性側と言われています。女性側では排卵障害、内膜形成不全、頚管粘液分泌不全および精子との適合障害、卵管疎通性障害、種々のホルモン値異常、子宮形態異常等がありますが、各々月経周期で検査する日が決まっており、一般的な婦人科診察を一度受診されただけでは殆どが検査できません。また不妊症の定義を満たさなければ健康保険は使えないため自己負担になりますので、もしなかなか妊娠成立しない場合で生理が順調であれば、まず生理周期から14を引いた数を生理開始日から数えた日が排卵日になりますので、3ヶ月間程その日に合わせて性交渉をもたれて、その結果をみてはいかがでしょうか。

授乳中の薬について

Q 授乳中ですが、頭痛薬は飲めますか。
A
乳汁中の薬の母乳への移行ですが、原則的に薬の母体血中濃度の1/100以下しか乳汁には移行しないので、大概の薬は使用可能です。但し、ホルモン剤等の特殊な薬や小児には投与しないような薬は一般的に使用を控えます。

人工妊娠中絶について

Q 人工妊娠中絶についておしえてください。
A
人工妊娠中絶術は、母体保護法に則って、指定医師のみが認定施設(医師と施設は一体)でのみ行えます。妊娠21週までに行わねばならず強姦(レイプ)以外は必ず相手の同意が必要です。妊娠週数および胎児の大きさによって処置が異なり、大きくは子宮内容を掻爬する(掻き出す)手術と、人工的に陣痛を起こし出産させる方法とに分けられます。初期は日帰り手術(※)でできますが、中期頃からは入院が必要となるため施行している施設が限られます。
(※手術自体は当日で完了しますが、術前の検査、術後の経過観察のために通院していただく場合があります。)

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